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テニスの物理学 ~ボールの軌道を求める運動方程式~

テニスの物理学,「空気中でのボールの軌道について考えよう」第3回です.

前々回前回とそれぞれ空気中で運動するテニスボールに働く力について考えました.今回は,これらをまとめて運動方程式を導きたいと思います.


force_equation


上図のような状況を考えます.右側をx軸の正,上側をy軸の正方向とします.ボールの質量を m として,重力は mgF d前々回のテーマである「抗力」(drag force),F l前回のテーマである「揚力」(lift force)を表しています.

図のようにθを



とすると,x軸,y軸に対する運動方程式はそれぞれ





となります.さらに



であることと,





と表されることを考えて,運動方程式は





となります.ちなみに,抗力係数 C dと,揚力係数 C lはそれぞれ





です.これまで「トップスピン」の場合を考えてきましたが,「バックスピン」の場合は式(7)(8)において,C lの前の符号を反転させてください.

あとは適当な初期条件(初速,出射角,スピン)を与えて,コンピュータ君に連立微分方程式方程式(7)(8)を解いてもらえば,各時刻での v xv y が求められます.求めた v xv y をそれぞれ積分することでx , y の時間発展が分かり,それらを x-y プロットすれば,ボールの軌道が描けます.

コート上でのボールのバウンドも考慮に入れる場合は,前々々回の記事「テニスの物理学 ~コートでのバウンド~」を参考に,ボールの座標 y が地面からボールの半径分の高さに達した瞬間のv xv yを用いて







からバウンド後の v xv y,ωを求め,これらを初期条件として再び微分方程式(7)(8)を解くことによって,バウンド後の軌道が描けます.なお,式(11)(13)は「トップスピン」の場合を想定しており,バックスピンの場合はそれぞれの式のω1の符号を反転させてください.

tennis_bound1.png

次回はシミュレーションの結果を適当に掲載したいと考えています.

参考

テーマ : テニス - ジャンル : スポーツ

テニスの物理学 ~スピンがボール軌道に与える影響~

前回から,空気中でのボール軌道について考えています.
今回のテーマは「揚力」(lift force)ないし「マグナス力」(Magnus force)です.なお,この記事で用いられているノーテーション(数式中の文字が意味するもの)に関しては,前回の記事を参照して頂ければと思います.


force_in_the _air

図は前回の使いまわしですが,これはトップスピンのかかった,斜め下に向かって進むボールを表しています.赤矢印が今回のテーマです.

トップスピンはボールを沈みこませる働きがある,というのはよく知られています.それに加えて,例えば図のように斜め下方向に向かうボールに対しては,水平方向の速度を減速させる方向の成分をもつようになるのに注意してください.
水平方向の減速と,垂直方向への加速が同時に起こるからこそ,ナダルのエッグボールのような軌道が可能となるのです.

さて,この力はどんなものかというと,前回と同様に次元解析(参考:マグヌス力(wiki))から,



と表せます.添え字が変わっただけです(笑) ただし,働く方向は違います.
C lは例によって実験結果とあわせるためのパラメータであり,揚力係数(lift coefficient)と呼ばれます.テニスボールの場合はA. Stepanek氏による研究から,



だそうです.スピンがないとき(vspin=0)は分母が発散してC l=0となり,揚力は働きません.

どのぐらいの大きさなのか,具体的に数字で考えて見ましょう.
たしかナダルのトップスピンの平均回転数が3200 r.p.m.ぐらいとどこかで見た覚えがあるので,これを使ってみましょう(笑)ちなみに,r.p.m.はrevolution per minute の略で,1分間に何回転するかを表しています.3200 r.p.m.は毎秒53回転ぐらい,角速度に直すと335 rad/s ぐらいです.テニスボールの半径はおよそ0.033mなので,vspin= 11 m/s ぐらいになります.
プロ選手のストロークがどのくらいのスピード(初速)なのか分からないのですが,適当に100km/h (~ 28m/s )ぐらいと仮定することにします.このとき,



となります.ちなみに前回の記事を参照して抗力係数(drag coefficient)を計算するとC d=0.70 ぐらいになるので,ナダルばりのトップスピンがかかっている状況でさえ,抗力(空気抵抗)による影響のほうが大きいことがわかります.


今回はこのあたりにして,次回は重力,抗力,揚力の影響を考慮した運動方程式を考えることにしましょう.

参考

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テニスの物理学 ~ボールに対する空気抵抗~

今回からは空気中でのボールの描く軌道について考えてみたいと思います.

ボールに働く力は3つあり,

1. 誰もが知っている「重力」.地球の中心に向かって,ものをひきつける力です.

2. いわゆる空気抵抗.抗力 (drag force)と呼ぶことにします.ボールの進行方向と真逆の方向に向かって働きます.

3. 揚力 (lift force).物体の進行方向とは直交する方向に向かって働きます.(「揚力」というと,いかにも物を持ち上げる方向に働きそうですが,働く方向は上とはかぎりません.) マグナス力 (Magnus force)と呼ばれることもあります.トップスピンをかけるとボールが急激に沈んだり,スライスサーブが横に曲がったりするのは,この力が関係しています.

force_in_the _air
例えば上の図は,トップスピンのかかった,斜め下に向かって進むボールに対して働く力を示しています.

これらによる影響を3回に分けて記述していきたいと思います.
今回は「抗力」に関してです.


ボールに対する空気抵抗の影響


普段意識することはあまりないかもしれませんが,空気というのは意外と重いです (密度ρ=1.21 kg/m3ぐらい).
例えば,コートの端から端までボールが直線的に飛んだとして,ボールが掻き分けなければならない空気の重さは,



となります.ここで, R はボールの半径(0.033 m), l はコートの長さ(23.774 m)です.テニスボールは0.057 kg程度ですから,これはテニスボールよりも重いことになります.ボールは自分より重い量の空気を掻き分けて進まなければならないわけですから,コートの端にたどりつく頃にはかなり減速してしまっています.

ではこのとき具体的にどんな形の力が働いているかというと,



です(笑) (この式の形は次元解析から導かれます→Drag equation) ここで,A (= πR2)はボールの断面積, v はボールと空気の相対速度です.Cdは抗力係数(drag coefficient)と呼ばれる無次元量で,空気の性質やテニスボールの表面形状なんかによる影響をコミコミにした,都合のよいフィッティングパラメータ(実験結果と合うように適当に変えることのできる量)とでも思ってください.A. Stepanekによる研究では,



とすると実験結果とよく合うそうです.ここで,vspin (= R ω) は角速度ωのスピンによるボールの周速(peripheral speed)です.


さて,式(1)に含まれるパラメータのなかで,我々がどうこうできるのは,ボールのスピードに関係するパラメータ v のみです.ただし v は空気に対するボールの相対速度なので,風の影響を受けることになります.式(1)から,抗力はv の2乗に比例することがわかります.つまり,ボールの速度が遅い場合は抗力も弱く,ボールの速度が速い場合は抗力も強くなります.つまり,速いボールほど,より急激な減速を受けることになるわけです.

これってどのくらいの力なのでしょうか?

例えば,200 km/h (~ 55.5 m/s)のボールに働く力は,スピンと風の影響を無視して考えると,



となります.ボールに働く重力は F = mg から,0.56 [N]程度ですから,重力の6倍ほど強い力が働くことになります.結構なもんですよね.

逆に,40 km/h (~ 11.1 m/s)のボールに対しては,0.13 [N]程度(重力の1/4倍程度)となります.

じゃあ200km/h で放たれたサーブはレシーブするころには何km/h になっていて,レシーバーに到達するのに何秒ぐらいかかるわけ? という疑問が湧くのですが,それは微分方程式を解かないと分からないで,次々回の課題ということにしましょう(笑).

次回はスピンに関する力 「揚力」(もしくは「マグナス力」)について記述する予定です.

参考

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