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「音楽美論」 Eduard Hanslick(E.ハンスリック)


E.ハンスリック著の「音楽美論」の紹介・レビューです。

著者:Eduard Hanslick (ハンスリック)
訳:渡辺 護


1854年初版の、音楽美学についての本です。

19世紀中盤~後半のドイツ・オーストリアでは、「音楽音楽外のものを表現できるか」ということについて、大きな議論があったようです。それらは、具体的には音楽外的なものを音楽により表現しようとする「標題音楽」という立場の人々と、純粋に「音楽的に美なるもの」を音楽美学の最上規範とすべきだという「絶対音楽」を掲げる人々の対立だったようです。(まあ、個人的にはそれらが真っ向から対立する考え方とは思えない面もあります。標題(すなわち言葉で明示している)を掲げている時点で、ハンスリックの命題「音楽は明確な感情を表現できない」を認めているようなものですし・・・。)

で、今回紹介するこの「音楽美論」の著者、ハンスリックは「絶対音楽」側の先頭に立っていました。ちなみに、「絶対音楽」側にはブラームス(ブラームス本人はあまり乗り気ではなかったという話も・・・)、「標題音楽」側にはワーグナーやリストなどがいたようです。なんか、この議論自体が、ハンスリックとワーグナーの仲たがいから始まってるっぽい・・・w

まあ、個人的にはこの「音楽美論」は、音楽を鑑賞、批評する立場にある人間のとるべき理想的な態度を説いた本、という感じがします。当時はどうも、「音楽は感情を表現すべきである」とか、「感情の表現こそが音楽の目的である」という立場で音楽が批評されていたらしく、彼はその命題を否定するためにこの本を書いたようです。

「(前略)この確信からして本書の研究の第一の命題たる否定形の命題が生まれる。すなわち、まず第一に、音楽は『感情を表現すべきである』という一般に流布した考えに反対するのである。だからといって、このことから私が『音楽の絶対的無感情性を要求する』のだと結論することはできない。」
とは、彼が「音楽美論」の序言において述べている言葉ですが、彼は、音楽は芸術的な意図をもって感情を描写すべきであり、音楽は感情の描写が可能である、という命題を否定するのみであり、音楽が感情に作用しうるということは十分に認めているんですね。ただ、その感情作用力は音楽そのものの内容ではなく、その副次的な作用にすぎない、といっているわけです。

また、彼はこうも述べています。
「(前略)かくして音楽は感情の内容そのものを表現できないとすれば、感情に関して何を表現できるのであろうか。 ただ感情の動的なもの(dynamisch)だけである。」
この辺は、確かにそうだな~と思います。感情そのもの(愛とか希望とかw)は明確に表現できないとしても、対象として与えられたそれらの動きを表現すること(例えばビートの速さ、音程の上下など)は音楽の得意分野ではないでしょうか。

まあ、要は、音楽を評価する際に、わけのわからない、というか、どうにでも解釈しうるようなものについて、主観的、気分、感情に基づいた批評・鑑賞を行うのではなく、音楽の美しさをもっと純粋に音楽的な側面(例えば、ある一定の音符の並びであるとか、ある特定のリズムのパターンや和声)に重点を置いて、科学的、分析的に鑑賞・批評を行うべきではないか、つまり、、「もう少し冷静で、分析的な眼を音楽に対して向けてみませんか」というのが、彼の言いたかったことのように思います。

古い本なので、現代の音楽美学とは全く異なるのでしょうし、批判もたくさんある本のようですが、それでも有益な示唆をたくさん含んだ本だと思います。200ページぐらいの薄い本ですし、主張していることも難しいことではないので、読みやすいと思います。「音楽」はどうあるべきか、とかいったちょっぴり哲学的な命題に興味のある人はぜひ手にとってみてください。

P.S. 音楽表現に対する歴史・文化的な見方の変化というのは面白いですね。ちなみに「絶対音楽」、「標題音楽」ともに声楽曲(歌もの)ではなく、器楽曲(インスト)のみを対象とした考え方です。「音楽(とくに器楽)は特定のものを指し示さないゆえに、諸芸術の中でも最高位に位置する」(ショーペンハウアーだっけ?)みたいな考え方のあった時代なので、言葉というのは具体的すぎるがゆえに不純だとみなされていたのでしょうか?(僕は、今でも結構こう思ってますけどw) まあ、純粋に考察上ややこしくなってしまうからかもしれません。しかし、それ以前は声楽曲と器楽曲の立場は逆でした。(アリストテレスの「模倣論」) 
現在はこのあたりはどのように考えられているんでしょうね? また面白そうな本があったら読んでみようと思います。

テーマ : 音楽のある生活 - ジャンル : 音楽

tag : book_review 音楽 音楽生活

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